ジャンピング現象の科学的検証 (前編)

はじめに

こんにちは、B3の大木です。早いものでKUREHAに所属して2年半が過ぎまして、その中で前々から気になっていたことを今回アドカレの企画に乗じて解決していこうと思っています。それは紅茶を淹れるときジャンピングはなぜ起こるのか?ということです。記事が長くなってしまったので前後編に分けていきたいと思います。

そもそもジャンピングとは何か、知らない方も多いと思うので説明しますと、紅茶を淹れるとき茶葉にお湯を注いだあと、茶葉がポットの中で上下運動をするといった現象です。以下のリンクの神戸紅茶さんのホームページでわかりやすい動画が紹介されていますので参考にしてください。

↓神戸紅茶のリンク
https://shop.kobetea.co.jp/blog/2803/

ジャンピング現象の原理についてもこのホームページに記載があり、これがよく聞く一般的なジャンピングの説明です。簡単に言うと、紅茶の茶葉に空気が付着することが茶葉の上昇する運動を引き起こし、空気が弾けて下に沈むといったことを繰り返すのがジャンピングというわけです。また、一般的にジャンピングに必要だとされる条件は以下のものです。

  • 新鮮な茶葉
  • 汲みたての水
  • 沸騰したてのお湯
  • 球状のポット

上の3つは空気に関連したもの、球状のポットに関しては茶葉の運動を助ける役割だと解釈しました。私はそもそもこの説明、条件は正しいのかということ、そしてよく言われるジャンピングをした方が紅茶を美味しく淹れられるというのはどういうことなのかということに疑問を持ったので、今回実験をして確かめることにしました。

ジャンピングしやすい茶葉とは?

まずは茶葉の大きさを変えてジャンピングが生じる茶葉の特徴を確かめてみることにしました。使用した茶葉は、茶葉の大きいものから、べにふうき、ニルギリ、アッサムCTC、アッサムCTCの細かいもの、の4つです。

左からべにふうき、ニルギリ、アッサムCTC、アッサムCTCの細かいもの

これを湯通しをした球状のポット、汲みたての水を用いた100℃の沸かしたてのお湯で淹れたところこのようになりました。ティーポットで撮影者が反射していると思いますが気にしないでください、すみません。

茶葉の順番はそのままで下は少し時間が経ったもの

写真では少しわかりにくいのですが、一番左のべにふうきは下から上への運動はほとんどなく茶葉が浮いていただけと言う状態でした。なのでジャンピングが一番起きていたのは左から2番目のニルギリという結果でした。この結果をまとめると、茶葉が大きすぎると茶葉が下から上にあがることはほとんどなくジャンピングは起きない、茶葉が小さ過ぎてもすぐに沈んでしまいジャンピングは生じないということになりました。

今後の実験では最もジャンピングしたニルギリを使用します。等級はBOPです。

対流実験

はじめにでは述べませんでしたが、よく言われるジャンピングの起きる原因として水の対流に茶葉が乗っかるといったものがあります。小学校の理科で水を加熱すると対流現象が起きることは習ったと思います。正直なことをいうと実験する前からこれはあまりジャンピングには関係ないのでは?と思っていたのですが、ごちゃごちゃいう前に実験していきます。

熱湯をポットに注いだあとに食紅を薄めたものをポットの下の方に垂らしてみました。結果はこのようになりました。

下からゆらゆらしているものが見えると思います。写真だけではわかりませんが、これが上昇する速度は遥かにジャンピングより遅く、これがジャンピングに寄与しているとは考えにくいです。そして、茶葉よりも遥かに軽い食紅の粒子でこれなら、茶葉を対流で上下運動させるというのは到底無理な話だと言えそうです。

さっき言った、対流は関係ないのではと思った理由ですが、それは小学校で習った理科の実験とはまるで状況が違うということです。というのも、今回は熱湯を注いでいるだけなので下からの加熱はありません、なので下から上への運動がほとんどなさそうなのは検討がつきます。もっというと、均一な温度の熱湯をポット全体に注ぐので対流に必要な温度勾配ができにくいことから、上部の空気と接するところでのお湯への冷却効果がどの程度大きいかが要になるわけですが、これが大きいとは考えにくいです。

ここでの結果としては、水の対流効果は特にジャンピングには関係なさそうということです。

お湯の温度による依存性

次にお湯の温度がどの程度ジャンピングに対して影響するのか調べました。今回は100℃、90℃、80℃、常温(19℃程度)の4つで実験してみました。結果からいうと、全ての温度でジャンピングは起こるということです。常温でもジャンピングするというのは結構びっくりする内容なのではないでしょうか。常温については一応証拠を貼っておきます。

常温で淹れた場合(右が時間が経ったもの。まだ茶葉が運動しているのが確認できる)

どんな温度でもジャンピングは起きていましたが、一つ変わったこととしてはジャンピングの勢い、つまり一気にジャンピングする茶葉の量が温度が低くなるほど小さくなっていることがわかりました。特に常温のものは少しの茶葉が長い時間をかけてジャンピングをしていました。

ここでの結果としては、ジャンピングをさせるだけであればお湯の温度は関係なく、温度を変えることでジャンピングの勢いを変えることができるということです

ということで前編はここまでにしたいと思います。後編ではいよいよお湯の中の空気による影響を調べていきたいと思います。