セーブルの話

こんにちは、広報を担当しています2年の葉浅雨です。寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

去年のアドベントカレンダーでドイツの陶磁器メーカーマイセンについて書きましたが、今年の夏休みにパリの郊外にあるセーブル国立陶磁器美術館に行ってきましたので、そこで撮った写真を載せつつフランスの陶磁器メーカーセーブルについて軽く書きたいです。ただのオタク語りかもしれないですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

セーブルの藍地

既にご存知かもしれませんが、セーブルとはパリの西部近郊にある町の名前です。そこでの磁器製作所で作られた作品はセーブル製品となります。セーブル製品の一番知られている特徴としては艶のある濃紺色の藍地と繊細な金彩です。図はお店、博物館と私家にある典型的なセーブル藍地の作品なのですが、お察しの通り、藍地にも均一に発色する濃紺色、むらのある藍地や金彩のハイライトが綴られている藍地などいろんなパターンがあります。

実は、それぞれの藍地には特定の名称があります。

右上三番目の均一の濃紺色(Sevres blue)、左下一番目のクラウデットブルー(Cloud blue)と左下二番目のラピスラズリブルー(Lapis-lazuli blue)はよく見かけるパターンです。彩釉には酸化コバルトの粉にテレビン油を混ぜて作った染料を使っていて、クラウデットブルーのようなむらのある模様は色つけたての藍地から筆で染料を一部取り除くことで作られています。図の下の列にある三つの藍地はとても華やかなゆえに、一見ありきたりの濃紺色一色の藍地は過小評価されるかもしれませんが、実は色を均一に発色させることは非常に難しく、セーブルならでは技術とも言えるでしょう。イギリスの陶磁器メーカー(ミントンなど)もセーブルの“王者の青”に似た作品を生産していましたが、残念ながらやはり色の艶感も均一性もセーブルには及ばなかったです。

セーブルの個性

セーブルは18世紀(白磁焼成に必要なカオリンを発掘した後創立、マイセンと同じパターン)世紀始発の陶磁器製造所であり、当時は王室や貴族のオーダーメードしか受け付けておらず、しかし同じく王室御用品を生産から大規模生産に変遷したマイセンや大倉陶園と違い、セーブルは当時から現代まで小規模生産を徹底していました。そのため現存の作品が少なくかつ年代が古く、博物館の収蔵品でさえ一度修復を受けたことのある作品が多いようです。また、オーダーメードが多い故に、買主の身分を示すために磁器に家紋や苗字の頭文字を取り入れることが多いです。

一方で、セーブル窯は創立早期に東洋文化の影響を受け、シノワズリとジャポニズムの作品は時々見かけますが、(稀ですが、図のように北京の故宫博物館で開催されたセーブル展やパリの国立陶磁器美術館にありました!)全般的な傾向としてはロココ様式がメインで、ヨーロッパのデザインを極めたと言っても過言ではないでしょう。

もちろん、華やかなヨーロッパ風の作品もたくさんあります。

また、もっと日常的に使用率の高いティーカップやコーヒーカップに目を向けると、ハンドルからもデザインにおける工夫を感じられます。

例えば図のようなモデルはデザイナーの名前で名付けられ、“ペイール”と呼ばれています。最も特徴的な部分はハンドルにある三つの突起であり、これらの突起によって指を通す時にカップが非常に持ちやすくなります。しかし、このモデルは現代ではもう生産されていないらしく、ちょっと寂しいですが、一つの時代の印になったのかもしれません。

終わりに

セーブルにはゴージャスで華やかなデザインもあれば、シンプルで洗練されたデザインもあり、私はどれにも魅了されています。時代の変遷につれて、優秀な絵付師がどんどん少なくなり、人件費も上がる中、現代のセーブル磁器製作も華麗なデザインから藍地や白地に金彩を施すだけのシンプルなデザインに収束する傾向が見られますが、それでも小規模生産を徹底しているツンデレなところからも面白さを感じます。

セーブル国立陶磁器美術館にあるか解説文はやはりフランス語がメインなのと、閉館時間がとても早くて私は駆逐されましたので、またフランス語に精進してリベンジしに行きたいです。また、セーブルに関する専門書は非常に少なく、この記事は私の知識だけで書いた部分が多いため、不正確なところがあるかもしれませんが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。

話が長々となりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。それと少し早いかもしれませんが、良いクリスマスを!